雨の街角

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| 2019.08.11 Sunday |
第七章 転機 〜コンビニのバイト〜

「そうだ、俺、先月からバイト始めたんだよ」
克己はさりげなく話題を変えた。
「何のバイト?」
「ほら俺の家の近くに新しくコンビニが出来たって言ってただろ?そこ」
『コンビニ、お兄ちゃんと一緒か』由香の心のつぶやきに気づくこともなく、克己は続けた。
「うちの店、今週で一人辞めるから欠員が出るんだ。新しいバイトを募集してるんだけど、由香一緒にやらない?」
「私はパーコンのバイトがあるから無理だよ」
「あれって夜に2,3時間だけだろう?掛け持ちで出来るんじゃない?」
「考えておくよ」
「いや、考える時間はないんだ。実は、今日の夕方、友達を連れて行くって店長に約束しちゃったから」
「そんなこと、知らないよ。私は行くなんて言ってないでしょう?勝手なことしないで」
由香は怒ったけど、面接に行ってくれないと面目が立たない、と泣きつく克己に押し切られ、バイトの面接を受けに行くことになってしまった。

「なんだ、いい子がいるって彼女だったの?」
面接を受けに店に入った途端、レジにいた店長らしき人にそう言われた。
「彼女じゃないっすよ。俺もこいつも別に相手いますから」
克己は頭をかきながら言った。
「じゃ、こっちに来て。履歴書は持ってきてくれた?」
「はい」
由香は克己の車の中で書いた履歴書を渡しながら返事をした。
「それじゃ克己君、面接してるあいだ、レジ頼むね」
「は〜い」
克己はのんきな返事をしながら、制服に着替えてレジに向かった。

コンビニで働くことは傷を癒すか、広げるだけなのか、由香にはそのときまだよく分からなかった。
傷…傷なんてものになっているのかさえ、分からなかった。
でも、コンビニで働くことで、お兄ちゃんを知りたかったのかもしれない。同じ仕事をすることで、彼がどんな生活をしているのか、また何を考えているのか、分かるかもしれないと思った。
面接中、考えるのは、お兄ちゃんのことだけだった。

「君、変わってるね。面接に来る子は、時給がいくらなのか、とか、休みはいつとか、そんなことばかり聞くのに、君からの質問は、仕事の詳細だけなんて」
店長はそう言って笑った。
簡単な面接で由香は即採用となった。

翌日の夕方から由香はコンビニのバイトに入った。
コンビニにはデイ勤(日勤)とナイト(夜勤)があって、由香が入る時間は16時か17時から21時頃までという、一番忙しい時間帯の夕勤だった。克己はナイトだったので夕勤から夜勤への引き継ぎの時、顔を合わせた。
目新しさもあったが、覚える仕事一つ一つが楽しかった。
そして、元々初対面の人とでも気兼ねなく話せる由香が、他のバイト、客、業者の人と仲良くなるのに時間はかからなかった。
そのうち、毎日のようにコンビニのバイトを入れるようになり、土日は朝から晩までコンビニにいるようになった。平日のコンパニオンの仕事はどうしても人が足らないからと頼み込まれた時以外は引き受けなくなった。
並行してノボルと会う回数も減っていった。

夕勤の仕事は、品出し、レジ打ちなどが主だったが、由香は夕勤が終わった後も居残りし、夜勤の仕事である締めの実査や売変(売価変更)、そして通常は店長が行う発注の仕事や返本の仕事なども教えてもらうようになり、数ヶ月後には店舗での仕事はすべて1人で出来るまでになった。

しかし、お兄ちゃんの仕事やその忙しさは理解出来たとしても、彼の心中まで察することなど、無理なことだった。



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| 2017.10.30 Monday |
電話ボックスの外は雨…
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レイニーブルー、私が大好きな歌。
「人影も見えない午前0時 電話ボックスの外は雨 かけなれたダイヤル回しかけてふと指を止める」
冒頭の一文。

午前0時の写真ではないが、本日午後10時頃の写真。
ここ数日、遅くまで仕事で、この写真を撮ったのも仕事の最中だった。
同僚をとある場所まで送り彼の仕事待ちをしている時、停めた車の横を見ると電話ボックスが見えた。車からはスマホからBluetoothで繋いでいた曲が流れてきた。レイニーブルーだった。
そうだ、電話ボックスの外は雨、の写真を撮ろうとスマホを持って電話ボックスに入った。
それはそれで変な図なんだけど(笑)

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| 2017.10.29 Sunday |
2017 愛媛レトロ旅 11
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旅館に着いてウェルカムドリンクのグリーンティを飲んでいると受付の人が言いました。
「あの…お聞きしてもよろしいでしょうか?9月7日は何かあるのですか?」と。「いいえ、何もありませんが」と答えると「そうですか。実は宿帳を見ていたら3年連続で9月7日にお泊まり頂いているので何かの記念日かと思いまして…」と。へ〜そうだったんだ、知らなかったよ。
家に帰って写真を見ると確かにそうでした(笑)

という話をしながら、夕食の時間を決め、部屋に。
今年は旅館に入るのが早かったので食事は18時にお願いしました。

一枚目の写真は一番美味しかった刺身です。見りゃ分かりますよね(笑)

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| 2017.10.27 Friday |
2017 愛媛レトロ旅 10
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道後温泉商店街を先に進む。
あ、あった、きっとここだ。何となく町屋っぽい。
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| 2017.10.26 Thursday |
第七章 転機 〜行き場のない寂しさ〜

季節は巡り、由香は大学生活2年目の春を迎えようとしていた。
サークルは、お兄ちゃんの忙しさで、開催されることもなく、解散状態になっていた。
お兄ちゃんからの電話は、この数ヶ月のあいだに一度か二度だけだった。

「俺ね、夜仕事することが多いでしょ?だから目が疲れるんだ。目に良いビタミンって何だっけ?おまえ栄養士になるための勉強してるからそういうの詳しいかと思って」
という電話がかかってきたときも
「角膜や網膜の細胞みたいに表面のことだったらビタミンAでウナギとかかぼちゃに多く含まれてるのね。で、視神経の働きみたいに奥の方のことだったらB群。ビタミンB2は、目の充血や眼精疲労に効くよ。B2はレバーとか卵とか…」
と説明してる途中で
「ごめん、またお客さん来ちゃった。えっと、ウナギとレバーね。ありがと。そういうのあまり食べてないから食べるようにするよ。じゃあね」
それだけ言って切れてしまった。
彼も本当にそのことが聞きたくて電話してきた訳じゃなくて、なかなか電話出来ないことへの後ろめたさから電話してきてくれたのかもしれないが、たった数分の電話くらいもう少し何とか出来ないのかな…由香は行き場のない寂しさを抱えていた。

こういう切なさを、計ったように現れるのは、何故かいつも克己だった。
その日も、数ヶ月前のカレンダーを見ながら『この日が電話で話した最後だな』と由香がつぶやいた時に克己はやってきた。
「よ、少しは元気になったか?」
「もうよく分からない」
由香は、笑うことも泣くことも出来ない、中間地点の顔をしてみせた。
「あ、そうだ、由香、なんだかんだ言って、結局あいつとつきあってるの?」
ノボルのことだった。
「つきあってないよ。時間があるとき、一緒に遊びに行ってるだけ」
「それをつきあってるっていうんだろう?俺の誘いは散々断ってきたくせに」
「どうだろ?手も握られたことなくて、つきあってるって言わないでしょ?普通。自己嫌悪に陥るよ。彼のこと利用してるみたいでさ」
勝手な女だと思った。
心の隙間を他の男で埋めているに過ぎないと、実際に利用しているのだと、自分でも分かっているのに、悪いのはあたかも相手の方だと言わんばかりの台詞だった。

克己は、話も一段落したと思ったのか、袋に入ったクマのぬいぐるみを車の後部座席から取り出しながら言った。
「もうすぐ誕生日でしょ?これプレゼント」
由香は少しだけ笑顔になって克己からのプレゼントを受け取った。
「ありがとう。覚えていてくれたんだ、私の誕生日もぬいぐるみが好きだってことも」
「そのくらい覚えてるよ。未だに初めて出会った日もつきあい始めた日だって覚えてる。何せ俺がこんなに惚れた女はおまえしかいないんだから」
克己の言葉を、馬鹿にしたように由香は答えた。
「はいはい。ありがと」
「茶化すなよ。本気だよ、俺は。おまえの彼氏より絶対俺の思いの方が勝ってるのに」
「そんなこと言って、克己、ちゃんと彼女がいるじゃない」
「そんなの、すぐにでも別れて由香のところに戻ってくるよ。おまえさえその気になってくれたら」
冗談なのか本気なのか、克己の言葉はいつもこんなだった。
「彼もそんなこと言って、前の彼女のところに戻っちゃったのかな」
由香はため息混じりに言ったが、克己はそれについては答えなかった。



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| 2017.10.25 Wednesday |
台風一過
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今朝9時、出勤途中で自転車を止めて撮ってみた。
まさに台風一過の空だった。
でもこの後、まだかなりの風が吹いていたし、雨も降ってきたけど。
それでも昨日とは同じ空とは思えない空の色だった。
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| 2017.10.23 Monday |
第六章 苦悩 〜罪悪感と悲壮感と〜

ある日のこと、ノボルは由香に紙包みを渡した。開けてみると、高級なブランドもののバッグが入っていた。
ノボルと遊び始めた頃、ペラペラめくっていた雑誌に載っていたバッグを指さして
「何でもしてくれるんだったら、これ買ってきてよ」
と冗談で言ったことを、思い出した。
「こんなのもらえないよ。あれは冗談だって分かってたでしょう?」
由香はそのバッグをノボルにつき返したが
「返されたって俺も困るよ。いらないなら棄ててくれたらいいから」
と強引に押しつけられた。

「ありがとう。でももうこんなことしちゃ駄目だよ。私たち友達でしょ?こんな高いもの買ってもらうような関係じゃないでしょう?」
ノボルはその言葉にうなずきながらも少し寂しそうだった。
もっと喜んであげた方が良かったのだろうか。
冷たい奴だな、と自分でも思ったけど、それでもやはり喜ぶことは出来なかった。

由香がもらったバッグを包みから出すと、そこには1本のカセットテープが入っていた。
「これは何?」
と聞くとノボルは
「俺の気持ち」
とだけ答えて、そのカセットをデッキに放り込んだ。
その歌は、好きになった女の子には恋人がいるが、その恋人になかなか会えず、女の子は寂しい思いをしている。自分はその子の側にいてやりたい、という内容の歌だった。
「この歌、俺のバイブルみたいな歌。それにぴったりすぎる部分があるんだよ。オンボロ車で迎えに行くからってとこ」
そう言ってノボルは笑ったけど、由香は笑えなかった。
また思い出していた。お兄ちゃんのことを。

「おまえの歌を見つけたんだ」
と言って、お兄ちゃんが聞かせてくれた歌があった。
「これのどこが?」
由香が聞くと
「何をするにしても、耳元で語ろうって言ってるじゃない?この歌」
よく分からない顔をしている由香に、お兄ちゃんは続けて言った。
「おまえ、耳触られるの苦手なんだろ?」
「え?知ってたの?」
「おまえのことはたいてい分かるって、いつも言ってるじゃないか。俺が、髪をなでる時、たまたまその手が耳に当たると、すごくくすぐったそうにしてるのを見て、意地悪してわざと耳触ったりしてたんだ。気づかなかった?」
お兄ちゃんはそう言って笑った。
その後も由香が憎まれ口を叩くたびに
「そんなこと言ってたら、こうしてやるからな」
と言いながら耳に息を吹きかけられて、よく怒っていた。

ノボルとお兄ちゃん…
比べてしまうことがあまりに多く、ノボルといると、だんだん苦しくなる自分を、由香は感じ始めていた。
そして日増しに、ノボルに会うのも辛くなっていった。

罪悪感と悲壮感と、何とも言えない感情が渦巻いていた。
誰といても、何をしていても、お兄ちゃんと会えない寂しさを埋めることは出来ないと、今更ながらに感じていた。



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| 2017.10.20 Friday |
2017 愛媛レトロ旅 9
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松山市駅前から路面電車に乗りました。
路面電車って走ってるのを見るのもいいけど、乗ったときの車窓がもっと好きです。
何だろう、懐かしい感じがする。
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| 2017.10.18 Wednesday |
幸せを運ぶタクシー
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昨日も一日中雨でしたね。
秋雨前線大いに活動中ってところでしょうか。

昨日は朝からまず中央郵便局に行きました。旦那が国際郵便を出しに行くというので。
旦那がEMS用紙を書いて手続きをしてる時間、暇だったので中央郵便局内のいろんなものを売ってるところをウロウロ。
特定郵便局にもレターセットなどを売っていることはありますが、ほんの数点あるだけで、それも発売してすぐだけ。
だからいつもいろんなグッズを売ってる中央郵便局は楽しいです。
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| 2017.10.16 Monday |
第六章 苦悩 〜ノボルとお兄ちゃん〜

「もしもし、由香?突然だけど、私、この前から吉川君とつきあってるんだ」
電話の主は、純子だった。
「え?吉川君と?」
「うん、あの合コンで意気投合してね。幹事の由香には報告しておこうと思って」
純子は、ノボルと出会った合コンに誘った、高校時代の友達だった。
そしてノボルと吉川君も、高校からの友達だった。由香と純子は別の学校に通っていたが、吉川君とノボルは高校を卒業した後も、同じ学校に通っていた。
ノボルが以前組んでいたバンドの仲間でもあり、ノボルは吉川君のことを親友だと話していた。
コンパの時、ずっとぼんやりしていた由香は、純子と吉川君の様子など、全く見ていなかったので、純子の話には正直驚いた。

「吉川君とノボルくんって仲がいいんだって?今度4人で遊ぼうってことになったんだけど。ダブルデートってやつ?」
純子はそう言って、嬉しそうに由香を誘った。
「純子たちはつき合ってるのかもしれないけど、私とノボルはそんな関係じゃないよ」
そう言って渋る由香に、純子は冷たく言った。
「由香、まだお兄ちゃんのこと引きずってるの?もう、彼のことは、いい加減あきらめた方がいいって。ほとんど会ってないんでしょ?連絡もあまりないって言ってたし。つきあってるのなら、普通あり得ないよ、そんなの。冷静に考えてみなよ」

お兄ちゃんと会わなくなってどれだけ経っただろう…
「もう他に女が出来たんだよ、きっと。由香だって薄々そう思ってるんじゃないの?」
純子はたたみかけるように言った。
彼女は、お兄ちゃんから連絡がなくなってきた頃、心配して遊びに誘ってくれていた友達だった。だから、由香とお兄ちゃんとの経緯をだいたい知っていた。
その純子がここまで言うのだ。いや、純子が言う前から、由香も心のどこかで思ってはいた。
彼から連絡がないのは、バイトが忙しい、ということだけが原因じゃないのでは?と。
純子が言うように、他に女が出来たのかもしれない。そうじゃなかったとしても、自分に対する興味が薄れたことだけは確かだろう。
あれだけ頻繁に連絡があったのに、急に途絶えてしまったのは、明らかにおかしい。

数日後、純子の提案通り、ノボルと吉川君と純子、そして由香の4人で飲み会をやることになった。
ノボルと吉川君はバンドを組んでいただけあってとても歌が上手く、飲み会の後に行ったカラオケは、大いに盛り上がった。
ほんの少しだけ、由香は現実を忘れられた。

純子たちも交えて4人の時もあったが、由香はそれからもほぼ毎週ノボルと会っていた。
ノボルは、どこかしらお兄ちゃんに似ていた。女の子のように可愛い外観や、車よりもバイクが好きなこと、モテるだろうと思うのに、イマイチ女の子に馴れていないところ…
出会いからして似ていた。誘われて嫌々行った場所にいたこと、興味のない由香にしきりに話しかけてきたこと。
悪いとは思いながらも、由香はノボルとお兄ちゃんを重ね合わせていた。



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| 2017.10.15 Sunday |
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