「小雨さん、ね、どうしたの?」
ハジメが中学の頃、私を好きだったという話を第三者の星野君から聞いた私は、激しく動揺した。
「え、う、うん、大丈夫」
「突然こんなこと言われても困るよね。ごめん」
私が困ったのは、星野君の告白にではなく、ハジメの話を聞いたからだった。
コーヒーが運ばれてきて、それを飲みながら、星野君は私が好きだったという話しを続けた。
彼はこんなにはっきり自分の気持ちを主張するような人だっただろうか?
中学の時の彼は、とてもおとなしく、目立たない人だった。あまり話したこともなかった。
ただ、彼も私やハジメが応援していた野球チームが好きで、私たちが野球の話をしていたら、時々その輪に入ってくることがあった。そうやって話しているうちに、私のことが好きになったのだと言った。
「俺にはない心の強さみたいなものを、小雨さんに感じたんだ。けど、俺がその強さと、小雨さんへの気持ちに気づいたとき、君はあっちゃんの影を追いかけてた。そして俺と同じ目で見ていたハジメ君にも気づいた」