雨の街角

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| 2017.12.12 Tuesday |
第七章 転機 〜店長代理〜

由香がコンビニの仕事にも馴れた頃、近くに同じ系列の店舗が増えることになった。日々風景が変わるかのようにコンビニが乱立され、毎日のように今日はどこどこのオープンだという言葉を聞いていた。
そのうち由香も、オープンの手伝いに借り出されるようになった。
店のオープンの時は、コンビニとしてはあまりやらないセールがあり、近所の主婦から子供、もちろんいつもの客層であるサラリーマンやドライバーなど多くの人が押し寄せ、レジに人が絶えることがない。
本部からも手伝いが来るので数人で客や荷物をさばくのだが、そのあいだにもどんどん業者がやってきて荷物の検品やら品出しがあり、少し人が落ち着いたところで伝票を綴じるファイルを作ったりプライスカードの点検をしたり、ラベラーで値段を貼ったり…と休む暇もない。

何店舗目かのオープンの手伝いに行った時、由香はCVS本部長に呼ばれた。
「今度、時間があるとき本部に来てもらえる?こっちの仕事もやって欲しいんだ。もちろんいつもの店とオープン店の手伝いも今まで通り頼むよ」
由香は、自分が認められたようで、嬉しかった。ただ、本部長の次の言葉には戸惑った。
「後、私の店の面倒を見てもらえないかな?今は私が店長と本部長を兼務してるんだが、両方はなかなか厳しくてね。今の店でも店長の仕事、やってくれてるって聞いてるから出来るよね?あとはシフトを組んでくれることくらいかな」
「私はまだ入ってそんなに経たないし、とても無理です」
由香は断ったが本部長は譲らなかった。
「売り上げがどうとか利益や採算がどうとかそんなことを君に言うつもりはないから。人の管理と店の仕入れなんかを見てくれれば。店長が決まるまでだけ、代理をお願いしたいんだ」
その話を聞きながら、由香はあのときのお兄ちゃんを思い出していた。彼もこうやって店長代理の話を聞いたのだろうか。

結局、由香は本部長の店の店長代理と本部の仕事、オープンスタッフ、そしていつもの店のバイトを掛け持つことになった。うっすらと夜が明けてくるのを横目にハンドルを握って帰路に着く毎日を送るようになった。
数時間だけ寝て朝には学校へ、そんな日々が続いたがそれでも仕事は楽しかった。
ただ店長業務で、一番頭を痛めたのがシフトだった。
コンビニは24時間365日営業。その全てに人を配置しなければならない。でも学生がバイトに入りたがらないテスト期間中、クリスマスや大晦日などイベントの時、連休、それらの日をどうやって埋めるか、いつも考えていた。
いろんな仕事をこなしながら、お兄ちゃんはどうしてるだろうと考えた。同じように店長代理の仕事をしながら一喜一憂しているのだろうか…と。
しかし、そんな話をしようにも、お兄ちゃんからの連絡はなかった。



〜開店と閉店〜

私が初めてオープンを手伝った店は、今勤めている会社のすぐ近くにあって、今日もそこを通りかかったので、写真を撮ってみた。暗くてよく見えないかもしれないが、今は普通の会社が入っているようだ。でもドアやウインドや隙間から見える中の様子はほとんど変わっていない。

初めてのオープンの手伝いの時、何をしたら良いか分からないのに、本部から来る人間はのぞく程度でほぼ私が仕切らなければならないような状態だった。2つ3つとオープンに携わるたびに、ファイルを作ること、新店舗としての商品の並べ方など自分なりに考えて仕切っていく方法も覚えたけど。
オープン時には安売りがあって、それだけでも人で溢れ返るのに、私が初めてオープンを手伝った店は、オープニング記念としてアイスクリームの販売があった。ディッシャーですくってコーンに積むあのアイス。しかしバケツに入ったそのアイスが硬くて硬くてなかなかすくえない。ダブルとかトリプルとか言われたらもうパニックだ。そのうちアイス売り場に長蛇の列が出来る、レジにも人が並ぶ、日配の商品はどんどん入って来る、オープンに間に合わなかった商品も運ばれてくる、それらの検品…バイトは新人ばかりでほとんど使えない。とにかく地獄のような3日間だった。

でもおかげでそのとき抱えていた心のほとんどを忘れることが出来た。忙しいと言う字は心をなくすことと書くとは上手く言ったものだ。

開店があれば閉店もある。
私が初めてオープンを手がけたあの店は、オープンからたった4年で閉店に追い込まれた。学校や会社がまわりにあってオープン当初はかなりの売り上げだったのに、1年も経たないうちにすぐ近くにローソンが出来てそちらに客を取られてしまい、数年の赤字経営の末、閉店に追い込まれた。
閉店した時、私はすでに自動車ディーラーに就職していたが、コンビニのバイトはこっそり続けていて、その店の閉店も私が手伝った。棚の商品、バックヤードの整理、プライスカードの取り外し、店舗の掃除…それらをやりながら開店の日のお祭り騒ぎを思い出していた。

すべてが終わり、店に鍵を閉めた時、あぁ…本当にこの店は終わりなんだなと無性に寂しくなった。24時間365日営業のコンビニに鍵をかけるとはそういうことだった。(実はこの店の閉店以外で一度だけいつものバイト先の店で鍵を閉めたことがあるのだが、その話はまた今度)
忘れもしない、あの店の閉店は12月31日24時だった。閉店を終えて家に帰ろうとしたとき、どこからともなく除夜の鐘の音が聞こえて来て寂しさに拍車をかけた。
この店を含めて私がオープンに携わった店は覚えているだけで20店舗近くあったが、開店と閉店、両方に携わることになったのはこの店だけだった。


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| 2017.11.05 Sunday |
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| 2017.12.12 Tuesday |
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