雨の街角

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| 2017.12.12 Tuesday |
第七章 転機 〜行き場のない寂しさ〜

季節は巡り、由香は大学生活2年目の春を迎えようとしていた。
サークルは、お兄ちゃんの忙しさで、開催されることもなく、解散状態になっていた。
お兄ちゃんからの電話は、この数ヶ月のあいだに一度か二度だけだった。

「俺ね、夜仕事することが多いでしょ?だから目が疲れるんだ。目に良いビタミンって何だっけ?おまえ栄養士になるための勉強してるからそういうの詳しいかと思って」
という電話がかかってきたときも
「角膜や網膜の細胞みたいに表面のことだったらビタミンAでウナギとかかぼちゃに多く含まれてるのね。で、視神経の働きみたいに奥の方のことだったらB群。ビタミンB2は、目の充血や眼精疲労に効くよ。B2はレバーとか卵とか…」
と説明してる途中で
「ごめん、またお客さん来ちゃった。えっと、ウナギとレバーね。ありがと。そういうのあまり食べてないから食べるようにするよ。じゃあね」
それだけ言って切れてしまった。
彼も本当にそのことが聞きたくて電話してきた訳じゃなくて、なかなか電話出来ないことへの後ろめたさから電話してきてくれたのかもしれないが、たった数分の電話くらいもう少し何とか出来ないのかな…由香は行き場のない寂しさを抱えていた。

こういう切なさを、計ったように現れるのは、何故かいつも克己だった。
その日も、数ヶ月前のカレンダーを見ながら『この日が電話で話した最後だな』と由香がつぶやいた時に克己はやってきた。
「よ、少しは元気になったか?」
「もうよく分からない」
由香は、笑うことも泣くことも出来ない、中間地点の顔をしてみせた。
「あ、そうだ、由香、なんだかんだ言って、結局あいつとつきあってるの?」
ノボルのことだった。
「つきあってないよ。時間があるとき、一緒に遊びに行ってるだけ」
「それをつきあってるっていうんだろう?俺の誘いは散々断ってきたくせに」
「どうだろ?手も握られたことなくて、つきあってるって言わないでしょ?普通。自己嫌悪に陥るよ。彼のこと利用してるみたいでさ」
勝手な女だと思った。
心の隙間を他の男で埋めているに過ぎないと、実際に利用しているのだと、自分でも分かっているのに、悪いのはあたかも相手の方だと言わんばかりの台詞だった。

克己は、話も一段落したと思ったのか、袋に入ったクマのぬいぐるみを車の後部座席から取り出しながら言った。
「もうすぐ誕生日でしょ?これプレゼント」
由香は少しだけ笑顔になって克己からのプレゼントを受け取った。
「ありがとう。覚えていてくれたんだ、私の誕生日もぬいぐるみが好きだってことも」
「そのくらい覚えてるよ。未だに初めて出会った日もつきあい始めた日だって覚えてる。何せ俺がこんなに惚れた女はおまえしかいないんだから」
克己の言葉を、馬鹿にしたように由香は答えた。
「はいはい。ありがと」
「茶化すなよ。本気だよ、俺は。おまえの彼氏より絶対俺の思いの方が勝ってるのに」
「そんなこと言って、克己、ちゃんと彼女がいるじゃない」
「そんなの、すぐにでも別れて由香のところに戻ってくるよ。おまえさえその気になってくれたら」
冗談なのか本気なのか、克己の言葉はいつもこんなだった。
「彼もそんなこと言って、前の彼女のところに戻っちゃったのかな」
由香はため息混じりに言ったが、克己はそれについては答えなかった。



〜プレゼント〜

去年末大掃除をしているときに撮ったぬいぐるみの山の写真を覚えていらっしゃるだろうか?
そのぬいぐるみの写真の中に「この辺りは元カレたちにもらったぬいぐるみ」と紹介した中の片隅にいたのがこのクマのぬいぐるみで、あのとき克己が持ってきてくれたもの。30年近く経っているのに結構綺麗だ…いや、30年近くじゃなくてちょうど30年だ。19の誕生日にもらったのだから(笑)
まぁそれはさておいて。
あのとき克己が持ってきてくれたぬいぐるみは彼がずっと続けていたラグビーの服を着てラグビーボールを持っていた。「ラグビーボールっておまえに似てる。どこに行くのかどこを向いているのか分からないところが…」とよく克己が言っていたことを思い出す。

私は子供の頃からぬいぐるみが好きで、昔からプレゼントにはぬいぐるみをもらうことが多かった。
プレゼントでよくもらうアクセサリーには全く興味がなかった。
今も全然興味がない。特に高い宝石などはその良さが全く分からないし、一つも持っていない。ネックレスもしないし、イヤリングもしない。ピアス穴ももちろん開けていない。唯一つけるアクセサリーは指輪だけどそれもリングだけ。

そんな私は、昔から恋人にアクセサリー以外でも、高いプレゼントをねだることは絶対になかった。
それどころか高いプレゼントをくれた人には申し訳ないがそれを叩き返していた。
叩き返すというと聞こえは悪いが絶対に受け取らなかった。
「男の人とつきあっても高いものを買ってもらったり豪華な食事をごちそうしてもらわないようにね。最近、別れる時に今まで支払った額を計算して、そのお金全部返してくれっていう男の人がいるらしいから」と母に言われたからだ。
私はその忠告を守り続けてきた(笑)
もちろん実際そんなことを言ってきた人は一人もいなかったが、それでも私は母のその忠告が気になり、別れる時には、その人から今まで貢いでもらった金額を計算しながら別れ話をした。

今から思えば貢いでもらったなんて思うこと自体が失礼な話なのだけど。
それに貢いでもらったのはお金よりも私のために使ってもらった大事な時間だったなと改めて思うのだった。


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| 2017.10.25 Wednesday |
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| 2017.12.12 Tuesday |
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