雨の街角

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| 2017.12.12 Tuesday |
第六章 苦悩 〜罪悪感と悲壮感と〜

ある日のこと、ノボルは由香に紙包みを渡した。開けてみると、高級なブランドもののバッグが入っていた。
ノボルと遊び始めた頃、ペラペラめくっていた雑誌に載っていたバッグを指さして
「何でもしてくれるんだったら、これ買ってきてよ」
と冗談で言ったことを、思い出した。
「こんなのもらえないよ。あれは冗談だって分かってたでしょう?」
由香はそのバッグをノボルにつき返したが
「返されたって俺も困るよ。いらないなら棄ててくれたらいいから」
と強引に押しつけられた。

「ありがとう。でももうこんなことしちゃ駄目だよ。私たち友達でしょ?こんな高いもの買ってもらうような関係じゃないでしょう?」
ノボルはその言葉にうなずきながらも少し寂しそうだった。
もっと喜んであげた方が良かったのだろうか。
冷たい奴だな、と自分でも思ったけど、それでもやはり喜ぶことは出来なかった。

由香がもらったバッグを包みから出すと、そこには1本のカセットテープが入っていた。
「これは何?」
と聞くとノボルは
「俺の気持ち」
とだけ答えて、そのカセットをデッキに放り込んだ。
その歌は、好きになった女の子には恋人がいるが、その恋人になかなか会えず、女の子は寂しい思いをしている。自分はその子の側にいてやりたい、という内容の歌だった。
「この歌、俺のバイブルみたいな歌。それにぴったりすぎる部分があるんだよ。オンボロ車で迎えに行くからってとこ」
そう言ってノボルは笑ったけど、由香は笑えなかった。
また思い出していた。お兄ちゃんのことを。

「おまえの歌を見つけたんだ」
と言って、お兄ちゃんが聞かせてくれた歌があった。
「これのどこが?」
由香が聞くと
「何をするにしても、耳元で語ろうって言ってるじゃない?この歌」
よく分からない顔をしている由香に、お兄ちゃんは続けて言った。
「おまえ、耳触られるの苦手なんだろ?」
「え?知ってたの?」
「おまえのことはたいてい分かるって、いつも言ってるじゃないか。俺が、髪をなでる時、たまたまその手が耳に当たると、すごくくすぐったそうにしてるのを見て、意地悪してわざと耳触ったりしてたんだ。気づかなかった?」
お兄ちゃんはそう言って笑った。
その後も由香が憎まれ口を叩くたびに
「そんなこと言ってたら、こうしてやるからな」
と言いながら耳に息を吹きかけられて、よく怒っていた。

ノボルとお兄ちゃん…
比べてしまうことがあまりに多く、ノボルといると、だんだん苦しくなる自分を、由香は感じ始めていた。
そして日増しに、ノボルに会うのも辛くなっていった。

罪悪感と悲壮感と、何とも言えない感情が渦巻いていた。
誰といても、何をしていても、お兄ちゃんと会えない寂しさを埋めることは出来ないと、今更ながらに感じていた。



〜あの時彼らが選んでくれた曲は〜

ノボルがバッグに一緒に入れてくれていたテープに入っていた曲は何だったかおわかりだろうか?
彼は「浜田省吾が好きだった」と言えば分かるかも?

あの時入っていた曲は「もうひとつの土曜日」だった。
歌詞を見れば確かにあのとき、私とノボルが置かれていた立場そのままの内容だった。
私は会いたい彼に全く会えず、それを歯痒い気持ちで見守るノボル。
ただこの歌の女性には「つなぎ合わせられるわずかな週末の彼との時」はあった。私にはそれさえもなくつなぎ合わせられるものはお兄ちゃんとの思い出だけになっていた。
「君を思う時、喜びと悲しみ、ふたつの思いに揺れ動く…」ノボルのその気持ちが分かるだけに、私はだんだんノボルに会うのも辛くなっていくのだった。
ノボルとこの歌の彼の違うところは、ノボルは私に時間が欲しいとか彼をあきらめて自分の方を向いて欲しいというニュアンスのことは一切言わなかったこと。ノボルが私に何を求めていたのだろうということは最後まで分からなかった。待っていればいつか自分の方を振り向いてくれると思っていたのか、それとも純粋に私のことを思い、ただ私の幸せを願っていたくれたのか…

そしてお兄ちゃんが私に聞かせた歌、それはサザンの「シャ・ラ・ラ」だった。
1980年に桑田佳祐と原由子の初デュエットとしてシングルで発売された歌だ。私がこの歌を初めて聴いたのは高校の時、サザン好きだった友人がどうしても聴いて欲しいといって渡してくれた「バラッド'77〜'82」というバラードアルバムでだった。初めて聴いた時には心に残るというほどの印象はなかった。

「何するにせよ、そうだ耳元で語ろう。例えば言葉がなくても心は不思議な期待など持てるこの頃」
冒頭はこんな言葉から始まる。
お兄ちゃんが「おまえの歌」と言って聞かせてくれた理由は物語の中でも書いた通りのことなんだけど、私の中では未だにこの歌は心の奥に突き刺さる歌で昔よくカセットテープに入れて作った「BEST SONGS」なんてものを今作るとしたら一番にこれを入れるだろう。
もうちょっとお話が進んだところで出てくるけど、もう1曲TUBEの「BECAUSE I LOVE YOU」という歌は2曲目に入る。
どちらも悲しい思い出つきの歌になっちゃったけど、私には大事な歌であることに違いない。

第六章 苦悩は今回で終了。次回からは第七章 転機をお届けします。はい、転機を迎えます(笑)


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| 2017.10.20 Friday |
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| 2017.12.12 Tuesday |
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