雨の街角

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| 2017.12.12 Tuesday |
第六章 苦悩 〜電話を待つだけの日々〜

ある日曜日、お兄ちゃんからもらったシフト表を見ると、ちょうど彼の入っている日だった。
由香はまた、彼のバイト先に行ってみることにした。忙しそうにしていたら、表から彼の姿を見てみるだけでもいい…と思った。
コンビニの前に車を止め、中をのぞいてみると、お兄ちゃんは見えず、バイト店員が2人見えるだけだった。由香は客のフリをして中に入ってみたが、それでもやはり彼はいなかった。
「すみません。今日は新井さん、いらっしゃると聞いたのですが…」
由香は客になりすまし、バイト店員に聞いた。
「今日はシフト変更になったので出てきてないんです。何かご用でした?」
「あ…いえ、ちょっと先日お願いしていたことがあって。でもいらっしゃらないのでしたら、また来ます」
「何か伝えておきましょうか?」
「いえ、結構です。お忙しい中ごめんなさい…ありがとうございます」
「申し訳ありません」
不審がる顔でもなく、アルバイトの店員は笑顔で応対してくれた。しかし、由香の心は複雑だった。
表に止めた車に乗り込み、コンビニを恨めしそうに見つめながら、独りごちた。
『バイトじゃないのなら連絡くれればいいのに。シフトが変わったのなら教えてくれたらいいのに。声が聞きたいのは私だけ?会いたいと思ってるのは私だけなの?』 

お兄ちゃんの家はここからすぐだ。
このまま車を飛ばそうか、それとも電話してみようか。
そう思ったけど、自分からは行かなかったし連絡もしなかった。

それ以降、お兄ちゃんのいるコンビニに行くのはやめた。
変に勘ぐってしまう自分が嫌だった。

それからも、明らかに電話の回数は減っていった。
お兄ちゃんに会えない時間を利用して、彼が好きな作家の本を読み、彼が好きなアーティストの歌を聴いた。
しかしそんなことをしても、彼と一緒に海で本を読んだことや、車で手をつなぎながら聴いた歌のことばかり思い出してしまう。
それらの行動は、会いたさが募るだけで、何の解決にもならなかった。
週末になるたび、もしかしたらバイトを休んで電話をくれるかもしれないと思い、朝から晩まで、電話の前で彼からの電話を待つだけの日々。
しかし、どれだけ待っても彼からの連絡はなかった。

由香は、寂しさをまぎらせるために、休みになるたび友達と出かけるようになった。遊園地、海、ショッピング…毎週毎週いろんなところに行った。
みんなの手前楽しそうに笑ったり話したりしたが、どこに行っても何をしていても気になるのはお兄ちゃんのことだけだった。
家に帰ったら「ただいま」というより先に「お母さん、誰かから電話なかった?」と聞くのだけど「ないよ。あったら言うって言ってるでしょ?誰の電話をそんなに待ってるのか知らないけど…」と呆れられる始末。
由香はもう出かけるのをやめた。
何をしていても、心の中では電話を待っているだけの状態。それはただ辛いだけだった。
それなら家で一人、膝を抱えて電話を待っている方がまだ良かった。辛かったけど、そんな状態で笑うよりはずっと良かった。

考えることはお兄ちゃんのことだけ。
彼に会うまでは、彼を好きになるまでは、恋人なんていらない、男なんて…と思っていた私。友人たちが恋人欲しさにサークル、サークルと騒ぐ姿に、嫌悪感すら覚えていた私。
それが今ではどうだろう。何をしていても彼のことしか考えられない、自分こそ、本当につまらない女だと、不気味な笑いさえこみ上げて来るのだった。



〜恋愛と携帯電話と私〜

あの頃、携帯電話というものがあったらこの恋はどうなっていただろう…
もっと頻繁に電話出来たかもしれないし、電話は出来なくてもメールするくらいの連絡はとれただろう。
私は携帯電話が普及した後に恋愛というものをしていないので、鮮明にはその違いは分からないけど、あの頃と今では携帯電話が絡むことによって、恋愛の仕方が大きく違うのだろうなと思う。
前回にも書いたように、彼は今日バイトしてるのだろうか?学校にいるのだろうか?と思った時「今何してる?」と打てばその返事くらいは返ってきただろうし、その答えによってある程度の安心は得られたかもしれない。

家にしか電話がなかった頃は、相手の家のことを考えればあまり遅く電話する訳にも行かず連絡一つするのに苦労し、待ち合わせをしても時間や場所の勘違いで苦労し…今は携帯に電話をすれば相手の家族を通さずとも連絡が出来、携帯に電話すればいつでもどこでも会うことが出来る。
けど、何もかもが簡単になってしまったからこそ見つけられないものもあるように思う。
苦労して連絡をとったり苦労して会うことが出来たからこそ掴める喜びみたいなものがあったのでは?
と言いつつ、あのときの私たちは連絡を取り合うことが出来ないままどんどんすれ違っていくのだけど…

携帯電話のあるなしで恋愛は大きく変化したように思うが、ふと気づいたことがある。
当時、携帯電話があっても私がそれを所持したかどうかということだ。
以前どこかで書いたと思うが、私が今持っている携帯電話は会社からの支給品で自分自身のものではない。
そしてその携帯の番号は、家族の他では、直属の上司数名、支店を含む連絡を取り合わなければならない同僚、業者の一部にしか教えていない。LINEのおともだちに登録してる人数は、旦那と会社の人間数人のみ。携帯電話もLINEもやりとりは業務連絡がほとんど。とは言うものの、番号もLINEも教える友達はいないのだけど。

早い話、電話が苦手なのだ、私は(笑)
どんな話をするのであっても電話じゃなくて面と向かって話したいし、電話で伝わるものが私には感じられない。電話で繋がる関係が何だか希薄に思える。
私は仕事以外で自ら受話器を手にすることはほとんどない。恋人に対しても友達に対してもそうだった。かと言って電話がかかってくることも苦手。だから家の電話も親戚家族とほんの一部の知り合いにしか教えていない。
そんなだから先ほども書いたように、ほとんどの友達と連絡が途切れてしまった。


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| 2017.09.25 Monday |
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| 2017.12.12 Tuesday |
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