雨の街角

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| 2019.03.18 Monday |
第五章 幸福 〜心の居場所〜

9月の中頃、秋というにはまだ少し早い暑い日のことだった。
「もしもし、俺だけど」
「お兄ちゃん、どうしたの?今日は学校じゃないの?」
彼は9月の始めに後期の講義が始まっていたが、由香の方は9月いっぱいまで夏休みだった。
「うん、さっき終わった。でも風邪ひいちゃったみたいで熱があるんだ。仕方ないから薬飲んだら、今度は頭がぼんやりとして、とてもバイクで帰れそうにないんだよ。悪いけど、迎えに来てもらえないかな?」
「どこにいるの?」
「うちの学校の前の美術館あるだろう?そこに…」
「分かった。すぐに行くから待ってて」
由香は電話を放り投げるように切って、一目散に車に乗り込んだ。
まだ暖まっていないエンジンを思いっきり回転させ、信号が黄色になるたび、アクセルを全開にした。

約束の場所に着いた時、お兄ちゃんは美術館の門にもたれて辛そうに立っていた。
「お兄ちゃん」
由香が助手席の窓を開けて彼を呼ぶと、少し微笑んで
「ごめんな。突然」
と言いながら車に乗り込んできたが、その足取りはふらついていた。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと大袈裟に言っただけ。会いたかったし」
「じゃ家まで送るね」
そういって由香は、行きと違って、ゆっくりと車を発進させた。

しばらく走って大通りに入ったところで、信号が赤になったので、由香はカーステレオの電源を入れた。
横を見ると、お兄ちゃんは安心しきったような顔をして眠っていた。
カーステレオからは、男性ボーカルの歌が聴こえてきた。
その歌は、雨の降る真夜中、電話ボックスから別れた元恋人のところに電話をかけようとして指を止める。街をさまよいながら行き交う車の中にその恋人の車を探して目で追ってしまう…という内容だった。
『私もお兄ちゃんと別れたら、電話をかけようとして躊躇したり、街で彼の車を探してしまうのだろうか。それより、こんなに大好きな人と別れて、私は普通でいられるのだろうか…』
助手席で眠るお兄ちゃんを見ながら考えていた。

国道から、少し入った川沿いの土手を降りたところに、お兄ちゃんの家はあった。
「着いたよ」
お兄ちゃんを揺すり起こそうとして驚いた。かなりの高熱であることが服の上からも分かった。
「お兄ちゃん、すごい熱じゃない。大丈夫だって言ったくせに」
「その熱のせいで会えたし、おまえの運転する車にも乗れて良かったよ。あ、そうだ。このカセット借りていい?」
由香は、さっきまでかけていたカセットを取り出して、お兄ちゃんに渡しながら言った。
「ちゃんと寝るようにね。バイトはしばらく休まなきゃ駄目だよ」
「はいはい、分かりました。ありがとう。おまえも気をつけて帰れよ」
そう言ってお兄ちゃんは車を降りた。玄関のドアを開けて一度振り返り小さく手を振って家の中に消えていった。
その少し弱々しそうな後ろ姿を見ながら、もし彼がすごく遠いところへ行ってしまったとしても、私はこうやって飛んで迎えに行くだろう。
この人のためだったら、私は何だって出来る。
そんなことを考えていた。

でも、全然遠くないのに、ずっと同じ場所にいるのに、心だけはそう同じ場所にはいられなかった。



〜Girl〜

私がここで書いている歌は何の歌かおわかりになっただろうか?

答えは「徳永英明のレイニーブルー」
あのときお兄ちゃんに貸したテープはレイニーブルーが1曲目に入った徳永英明のデビューアルバム「Girl」だった。アルバム「Girl」とシングル「レイニーブルー」はデビュー時、同時発売された。
今ではレイニーブルーは徳永英明のデビュー曲として有名になっていて、多くの歌手がカバーを出しているが、彼がデビューした当時はそんなに有名ではなかった。徳永英明が有名になったのは富士フイルムのCMで「輝きながら」がタイアップとして流れてからだと思う。

私が初めてレイニーブルーを聴いたのはラジオだった。彼がまだデビューしたての頃。聴いた瞬間、この歌が好きになった。
私は心情だけを表現する歌よりも、その時の風景を描きながらそこに自然と心情が載ってくる歌詞が好きだ。この歌の冒頭部分は「人影も見えない午前0時、電話ボックスの外は雨 かけなれたダイヤル回しかけてふと指を止める」この一節でもう私はノックアウト。

お兄ちゃんと会えなくなってから、歌詞の中にある「あなたの白い車探し掛けて…」を「あなたの青い車探し掛けて…」と歌詞を変えてよく歌った。
その「白い車」の部分、レコード化する前の原曲は「白いクーペ」だったことをご存じだろうか。
あと「私も今日はそっと雨」は「私を襲う東京は雨」から変わり、最後に「僕のレイニーブルー」という言葉が出てくるなど一部歌詞が違う。(歌詞の違う原曲は1990年のライブアルバムに入っている)

世の中に歌というものがいくらあるのか検討も付かないが、私の中で「レイニーブルー」はナンバーワンだ。そのくらい好きなのである。
だからこの歌についてきっと私は他の方よりも知っていると思う。
前述したように、原曲は歌詞が少し違うこと、この歌の作詞をしたのは彼の昔の仲間(大木誠さん)で徳永英明が元々つけていたタイトルは「レイニーシーズン」だったこと、彼がバイト仲間たちと開いたライブでこの「レイニーシーズン」を気に入ってくれた人がいたのにデモテープを作っておらず慌てて作ったこと、そのデモテープは何本も作って自分がバイトをしていた喫茶店にプロデューサーやテレビ局関係者が来るたび聴いて欲しいといって渡していたこと…など。

最後に私が当時ミニカをすっ飛ばしながら聴いていたアルバムのベスト10をご紹介したいと思う。
何故これだけお話した「レイニーブルー」が入った「Girl」がランキングされていないのか…それは後ほど明かされます。

1.missing 池田聡
2.Crimson 中森明菜
3.REQUEST 竹内まりや
4.そよ風の贈り物 Whitney Houston
5.BOYS ON THE BEACH TUBE
6.miss.M 中島みゆき
7.Standing Ovation チャゲ&飛鳥
8.True Blue Madonna
9.バラッド '77〜'82 サザンオールスターズ
10.J-BOY 浜田省吾

これらのアルバムに入っている曲がこの後、お話の中にも何曲か登場するので、その時またどのアルバムに入っているのかご紹介していきますね。


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| 2017.08.25 Friday |
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