雨の街角

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第一章 嫌悪 〜ムカつく男〜

約束の土曜日がやってきた。初めてのサークルはボウリングだった。
ゲームの前に通っている学校や学部などそれぞれ自己紹介をし、その後勝負が始まった。チーム対抗で、最下位チームが1位チームのゲーム代金と、あとで行く喫茶店代を払うということだった。
由香は真剣に投げていたが、他の人はしょせんお遊びとばかりに、ふざけてばかりいた。特に女の子はガーターをとることが宿命のように、溝掃除をしては「やだぁ」と甘えた声を出しては「大丈夫、大丈夫」と男性たちに慰められていた。
ムッとした顔の由香を、のんちゃんが隣のレーンで見て、苦笑いしていた。
しかし、甘えた声で身体をくねらす女の子たちよりムカついたのが、隣のレーンで投げている男だった。
「遊びなんだからさ〜そんなに必死になるなよぉ」
と言ってふざけながら、自分は散々ストライクを出し、由香のいるチームと最後まで1位を争っていた。

結局、ゲームは由香のチームが2位、そのムカつく男がいるチームが1位で終了した。
「さぁ、人のおごりで旨い茶を飲もう〜」
と言いながら、靴を履き替えるその男を、由香は睨むように見ていた。
「ねぇ、ねぇ、由香ちゃんも彼のこと気に入ったの?」
同じチームだった恵ちゃんが、男を指さし、由香の耳元で言った。
「まさか、私がもっとも嫌いとするタイプなの。あんなふざけることしか知らないようなお調子者の男」
と反論したけど、恵ちゃんは由香の話など、耳に入らなかったかのように言った。
「でもね、このサークルの女の子は、ほとんど彼目当てみたい。特に、ほら、あの子、もうべったりでしょ?」
彼女があの子と指さした女は、その男に
「新井さん、惚れちゃったわ〜」
と言いながら、腕にぶら下がるようにじゃれついていた。
あんな女まだいたんだ…と思いながら、由香が見ているところに、のんちゃんがやってきた。
「何見てるの?あ、新井さんにぶら下がってる女ね。彼女、私と同じ大学で国文の子。でもねぇ、話合わないんだ、私とは。多分、由香ともね」
のんちゃんは、そう言って苦笑しながら続けた。
「彼女の家、画廊やっていて、お金持ちらしいよ。ほら、鈴木画廊ってあるじゃない?そこのお嬢様。あの子は気にしなくていいよ」
その画廊なら知っていた。由香が通っていた高校のすぐそばにある画廊だ。
「まだあんな女いるんだなと思って呆れて見てただけだから」
由香ものんちゃん同様、苦笑しながら答えた。
「それじゃ、正式にサークルに入る?入っていいってことよね?」
「え、いや、そういうことじゃなくて…」
と、由香がまごついているあいだに、のんちゃんは一人の男の人に駆け寄った。
「伊藤さん、由香ね、サークルに正式に入るって」
伊藤さんと呼ばれた男性は由香に向かって「よろしくね」と手を振っていた。
由香の方も、今更嫌だとも言えず、会釈した。

しかし、あの嫌な男、新井さんとその腕にぶら下がる女、鈴木さんは、そんなやりとりに見向きもせず、ずっといちゃいちゃしていた。



〜ボウリング〜

私が真剣にボウリングを始めたのは高校生の時だった。
小学生か中学生の頃、親に連れられて数回行ったことはあったが、その頃は単にボールを投げるだけで精一杯で、スコアはせいぜい50とか60とかその程度だったように思う。

以前悲しきスクールガールでも書いたように、時折高校を抜け出していた私は、暇つぶしにボウリング場に行くことがあった。そこで誰に教わる訳でもなく黙々と投げていた。すると近くのレーンで練習していたおじいさんたちが「お嬢さん、あそこにピンが残った時はあの辺りを狙うんだよ」とか「1投目は1番ピンと3番ピンの間を通すんだよ、そこをポケットっていうんだ」とか「ピンが並んでいるところを見ずにレーン上の右から2番目のスパットだけを見てその辺りを通すように投げてみて。そこにちゃんと投げられるようになったらだんだんピンの方を向かって投げるようにするんだよ。これ裏技だけどね」とかいろいろ解説してくれた。
そうやって教えてもらって上手くなるとおもしろくなり、毎日のように通い詰めた頃もあった。

当時私が使っていたボールは13ポンド。今だったら無理だ、そんなに重い球。今はせいぜい10か11ポンド。
あの頃は今よりも20キロ近く体重が少なかったのに、私はかなり力持ちだった(笑)

アベレージはといえば、160くらいだったので、友達と行って負けることはなかった。
そんなだったからあのときチーム戦とはいえ、負けたことは相当に悔しかったし腹も立った。
甘えた声でガーターばかり出してる女性陣にもムカついたけど。
その後何度かサークルでボウリングがあったけど、以来負けることはなかった。必死で投げている私を裏では笑ってる人もいたのだろうけど。
でもさすがにマイボールマイシューズを持ってるとかリスタイをするほどではなかったですよ(笑)

私が入ったそのサークルは全部で20人弱くらいだったと思う。
のんちゃんが電話で説明してくれたように男性はみんなのんちゃんと同じ大学の一つ先輩、2回生ばかりで、女性は鈴木さんやのんちゃんのように男性だちと同じ大学の人もいたが、他の女性は別の大学や短大から参加している人が多かった。
そしてその鈴木さんだが、私とは最後まで仲良くなることはなかった(笑)他の女の子とはサークルで会えば話をしたり時にはサークル外で遊んだこともあったのだけど。
鈴木さんはお互い初めての印象が悪かったこと、その後いろいろあったということもあるけど、どうしても仲良くはなれない部類の人だった。


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| 2017.04.15 Saturday |
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| 2017.12.12 Tuesday |
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