雨の街角

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クリスマス 就職編


人間には途轍もなくモテる時期があると言うが、私にとってあの時がそうだったのだろうと思う。
あれは、私が初めて就職した頃のことだった。
大学の時から車やバイクが大好きだったので、就職試験は全てディーラーを受け、いくつかもらった内定先の中で、女でも積極的にセールスをさせてくれると約束してくれた会社に就職を決めた。

入社して3ヶ月は研修期間だった。同期の営業は10人で、女性の営業は私を含めて3人。私以外の女の子2人は営業希望ではなかったらしく、毎日営業なんて嫌だ嫌だと文句ばかり言っていた。営業に燃えていた私とは全く話しがかみ合わなかった。
同期の男の子たちとは、ライバル心メラメラの中にも仲間意識が沸いていた。中でも同期の女の子たちが格好いいと騒いでいたSとは仲が良く、配属後も、私とSは月に一度は会って、愚痴を言ったり、お互いを励まし合ったりしていた。私は彼を仲の良い同期にしか思っていなかったが、しばらくして私は彼から「同期の仲間としてではなく、おまえのことが好きだ」と言われた。

私の配属先には10人ほどのセールスと3人のサービスマンがいた。私が敬語を使うのは所長だけで、他の先輩全員に、配属すぐからタメ口だった。そんな生意気な後輩だったにも関わらず、みんな私に良くしてくれた。中でも5年先輩のサービスマン2人には本当に良くしてもらった。
彼ら2人に好きだと告白されたのは、ほぼ同時のことだった。

それだけなら、まぁモテるんだねということで済まされるのだろうが、私は好きだと言ってくれた全員とつきあった。それも同時に。つきあうと言っても、誰ともそういう関係にはなっていなかった。彼ら以外にも、就職前からつきあっていた人、加えて一番多い時は6人と同時につきあっていた期間があった。そして、みんな私が複数人とつきあっていたことを知っていた。

とある年のクリスマスイヴ、私は先輩のサービスマンの1人に夜少しだけ時間を作って欲しいと言われた。真っ暗な山奥に着き、合図をするまで目を閉じていて欲しいと言われ、私は言われた通りにした。内心、この山奥で刺されるのかもしれないと思いながら…
「いいよ」と言われて目を開けると、彼は自分の車の後部座席を改造してきらびやかな飾り付けをし、車全体をクリスマスツリーに仕上げていた。
「ごめん、こんなことくらいしかしてあげられなくて。おまえが他にたくさんの人とつきあってることは知ってる。他の人からはいろんなプレゼントをもらうんだろうと思う。でも高価なプレゼントをあげるより、思い出に残る時間をあげたかった」
と彼は言った。彼はその車を「命の次に大事な車」と言っていたのに、私のためにこんな改造してしまっては、もう元には戻せない…私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

彼らの気持ちにあぐらをかいて、いい気になっていた私は、あの日を境に多くの人とつきあうのはやめた。
彼からのプレゼントは思い出に残る時間ではなく、ちゃんとした心を取り戻す薬だったように今になってやっと思える。


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| 2011.12.26 Monday |
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| 2019.08.11 Sunday |
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