雨の街角

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隠された君の涙


「もう別れよって言われたん、あいつに」
ナオミちゃんはポツンと言った。それっきり彼女は黙ってしまった。

ナオミちゃんは、喫茶店でバイトをしていた。私より2つ年下で、笑うとえくぼの出来る可愛い子だった。
私がアイス珈琲を飲んでいると、バイト先でいつもやっているのか、グラスについた水滴をおしぼりで拭うのが癖のようになっていた。
彼女が恋人と別れたと言ったあの日も、やはりずっとそうやってグラスについた水滴を何度も何度も拭っていた。

珈琲を飲み干して立ち上がった私は、「おいで」と言って彼女を助手席に乗せ、猛スピードで車を飛ばした。そして助手席の窓を開け「泣きたい時は泣く。怒りたい時は怒る!」と叫んだ。
ナオミちゃんは窓の外に向かって彼の悪口を叫ぶだけ叫び号泣した。

「すっきりした。つきあってくれてホンマありがと。な、この車、壊れるまでずっと乗っててな。で、また叫びたくなったら乗せてな。私、この車、大嫌いやねん。でもやっぱり大好きやねん」
ナオミちゃんはそう言って、泣き笑いしたような表情で、私の車から降りた。
私がその時乗っていた車は、ナオミちゃんの彼氏が乗っていたのと同じレビンだった。
しかし、私がレビンから車を乗り換えた頃、ナオミちゃんとは音信不通になってしまった。

昨日、たまたまナオミちゃんがバイトをしていた喫茶店があった場所を通りかかった。坂道の途中にあったあの喫茶店は今では病院に変わっていた。
旦那にそのことを告げると旦那は「そっか。ナオミな、結婚して3人も子供抱えて大変らしいで」と言って笑った。
ナオミちゃんはもう心の水滴を拭い終わったらしい。


注:ナオミちゃんは元々は旦那の友達です(笑)


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| 2012.09.05 Wednesday | 追伸 あなたへ | - | - |
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