雨の街角

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| 2019.08.11 Sunday |
第一章 嫌悪 〜サークル〜

「由香、由香、ね、もう決めた?」
そう言って、後ろから抱きついて声を掛けてきたのは、智美だった。
智美は高校の時からの同級生で、同じクラスになったことはなかったが、何となく気が合い登下校を共にする友人だった。
智美の後ろには、同じく高校の時の友人が、数人連なっていた。
「何よ、いきなり。びっくりするじゃない。決めたって、選択教科のこと?まだ決めてないよ。内容もよく分からなかったし」
由香は、しかめっ面をしながら答えた。
「選択教科?何言ってるの。私が聞いてるのはサークルのこと、サークル」
智美はサークルの部分だけ、やけに強調しながら、興奮気味に言った。
「サークル?」
「そう、サークルよ!どこに入るの?私はねぇ…」
「サークルなんて入る気ないよ。そんな、飢えた女が、ギラギラした目で男探しするようなところ」
由香は智美の言葉を遮りながら答えた。
「また始まった、由香の男嫌い。そんなこと言わないで、一緒に入ろうよ。テニスサークルなんだけど。コート、うちの学校からすぐのところだし」
智美は、由香の冷たい言葉にもめげずに言った。
「だ、か、ら、私は入る気ないって」
由香は、心底嫌そうに答えた。

私立の高校を卒業し、エスカレーター式の女子短大に入学した彼女たちは、今日が入学式だった。
式のあと、講堂に残された新入生たちは、必須教科や選択教科、単位や優良可などという話を頭に詰め込まれ、帰路に着くところだった。
みんな、期待と夢で高揚した様子だった。
しかしその高揚は、決して数日後から始まる講義に対するものではなく、サークルに向けられたものだった。智美に限らず、選択教科について関心を持っている友人など、誰一人としていなかった。

彼女たちが通う短大には、少し離れたところに姉妹校のような共学の四大があり、そこの学生が主催するサークルに入る子が多かった。
智美の後ろに連なった友人たちも、それぞれ違うサークルではあるが、その四大のサークルに入るのだと、口々に話していた。

「じゃあね」
由香は智美たちに手を挙げて門を出た。
智美はまだサークルの話をしたそうだったが、そんな目線を無視して、由香はその場から立ち去った。

「サークルねぇ…」
智美を初めとして、友人たちの高揚した様子が浮かんだ。
由香にはサークルなんていうものの大事さや楽しさが、さっぱり分からなかった。
そこまでして男探し、女探しがしたいのだろうか?恋人が欲しいのだろうか?異性と接点が欲しいのだろうか?
心の中で自問したが、答えは出なかった。


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| 2017.04.07 Friday |
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