「そういえば、花見、行けず終いだったね。覚えてる?約束したこと」
「確か、居酒屋に行ったあと、おまえを送って行ってやった時、そんな話をしたんだったよな」
「よく覚えていたね」
「俺、そんなに物忘れ激しくないぞ」
「でも、私のこと、すぐにでも忘れていたりしてね」
「そんなに簡単に忘れられるようなことじゃ…ないと思う」
「ね、私たちいつか笑って会える時が来るのかな」
「いや、来ないでしょ」
「何で?」
「何事もなかったかのように笑いあえるなら、元々何事もなかったんだよ。何事もあったからこそ、笑ってなんて会えない。二度と」
彼の言葉が、私の心に重く重くのし掛かっていた。
でも、その通りだと思った。
今までつきあって来た何人かの恋人たちのほとんどを別れても友達と呼んでいたし、実際に友達としてのつきあいを続けていた。
しかし、この人と別れた後、私は彼のことを友達なんて絶対に呼べない、そう思った。