雨の街角

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晴れの朝と雨の午後
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最近、関東では今月に入って毎日雨だというニュースを流してる。
でもこっちもそう。1日降ってる訳じゃないけど、朝は晴れているのに午後になると夕立のような雨。昨日もそうだった。ほぼ毎日。
朝はこんな感じで夏の空って感じだったのに…
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| 2017.08.16 Wednesday | 日々 | comments(2) | - |
第五章 幸福 〜名残惜しい唇〜

車を降り、お兄ちゃんに手を引かれて着いたところは、周りに工場ばかりが建ち並ぶ埋め立て地の埠頭だった。
「前に本を読みにバイクでよく海に来たって言ってただろ?あれがここ。俺の指定席」
お兄ちゃんは防波堤の壁を指さしながら、そう言って微笑んだ。 
しばらくのあいだ、二人は防波堤に腰掛けて波の音を聞いていた。その音は初めて行ったあの海の音とは、また違った音に聞こえた。
目を閉じて波の音を聞いている由香に
「はい」
と言って、お兄ちゃんが火のついた煙草を差し出した。
「何?」
と言いながら受け取ると、お兄ちゃんが言った。
「いつも車で火をつけて渡してくれるじゃない?いつか、俺が火をつけて渡してあげようと思ってたんだ」

二人でその煙草を交互に吸った。
それ以来、二人きりになるとよくそうした。共有している気分が心地よかった。
でも、別れ際近くになると、二人は一切煙草を吸わなかった。
約束してそうした訳じゃないけど『別れのキスが煙草臭いのは、嫌だよね』と以前話してからだったと思う。
そして由香は煙草臭くない別れのキスを毎回受けた。
名残惜しそうにしてくれる、あの唇の感触が大好きだった。

気がつくと、夏休みに入ってからかなりの日数が経っていた。
お兄ちゃんに会う時間とバイトの時間をはずしながら、由香は教習所へ通っていて、8月の終わり頃、やっと免許がとれた。その免許を手に早速お兄ちゃんに電話をした。
「お兄ちゃん?今日ね、免許とれたの。これで後期から学校に車で通えるよ」
「おまえ、電車とスクールバス苦手だって言ってたもんな。良かったじゃないか、おめでとう。じゃ、早速俺が運転見てやるよ」
「いいよ…もし事故でもして怪我させちゃ困るし」
由香は断ったけど、お兄ちゃんは
「怪我したら、おまえに一生面倒見てもらえるから一石二鳥でしょ?」
と、訳の分からないことを言った。
「嫌だよ。とにかく、私は運転しないからね」
「じゃ、いいよ。運転しなくていいから、出かけよう。今から迎えに行くよ」
そう言って電話は切れた。

迎えに来てくれた時、お兄ちゃんは由香の赤い軽自動車に気づいた。
「もしかしたら、あの赤い軽、おまえの?」
「そう。頑張ってバイトして、卒業までに普通車買うんだ」
そんな由香の言葉を聞かなかったかのように、お兄ちゃんは言った。
「気をつけよう、赤いミニカの683」
「何、それ?」
「俺だけの交通標語」
「つまらないこと言わないでよね」
由香がちょっとふくれて見せると、お兄ちゃんはそれを見て笑った。



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| 2017.08.15 Tuesday | ニタモノドウシ | comments(8) | - |
人生初のバイトは… 2
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コンパニオンのバイトは前述したように良いことばかりとはいかなかった。

一番困ったのは、お酒を呑まなければいけないこと。
私は酒が一滴も呑めない。下戸ってやつだ。パーティの時は勧められても呑んではいけないのだが、宴会の仕事の時は呑まなければいけない。いや、いけなくはないが勧められて呑まないと「客の酒が呑めないのか」と気分を害される。特に自分がチーフの時は「呑めません」なんて絶対に言えない。次から使ってもらえなくなる。
無理に呑んで気分が悪くなり、電柱にもたれかかっていたところを祇園の交番に保護されたということが2度ほどあった。
「お仕事とは言え、大変ですね。お酒、弱いんですか?」警官が聞いてきた。未成年のバイトとは見破られなかったということだろう(笑)
でもそのうちこれまたお客さんに「呑まなくても呑んだふりをする上手い方法」を教えてもらい、何とかごまかす術を得た。これも社会に出てから役に立った。

お酒が嫌いなのだから、作り方も全く分からなかった。
ワンフィンガーとツーフィンが−、ロックとストレートの違いも分からなかったし、もちろんハイボールも知らなかった。「ヘネシー、ツーフィンガーで」なんて言われてもちんぷんかんぷん。
その後、勉強して意味は分かったが、ワンフィンガーとツーフィンガーを目分量で量ることが出来ず、始めは本当に指1本や2本で量っていた。
ただ、匂いを嗅ぐだけで吐き気がしてくるほどの酒嫌いだったので、作り方が分かったとしても毎回馴れなくて困った。

逆に結構早々に馴れたのがハイヒールだった。
パーティでの接待はドレスや整列したときの印象を良くするため、全員の身長を175センチに合わせていた。私は163センチだったので10センチちょっとのヒールを履いていたが、すぐにロングドレスを着て楚々と歩けるようになった。
今でも15センチくらいのヒールを見るととても懐かしく思う。特に黒いの(笑)
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| 2017.08.13 Sunday | 昔の私、今の私 | comments(6) | - |
知恩寺と知恩院 2
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あぁ…違う記事ばかりアップしていたら前回の知恩寺の写真からすでに10日以上が経っていた。もうこの記事の続きのことなど忘れられていたのではないだろうか…と思いつつ、知恩寺と知恩院 2をお送りします。

古本市から目をそらすと普通のお寺の風景が。
私自身はお寺は静かであって欲しいと願う場所なので、本当はこういうのはやって欲しくないなぁと思ってます。
古本市も手作り市もね…(好きな方には申し訳ないのですが)

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| 2017.08.12 Saturday | 京都・神戸 | comments(6) | - |
第五章 幸福 〜嬉しい約束〜

次のサークルについての電話が、のんちゃんから入ってきた。しかし、指定されたその日、由香は用事があって行けなかった。無理だと伝えると
「そっか、じゃ仕方ないね。新井さんの方には私から連絡しておくよ」
と言ってくれたので、のんちゃんに謝って電話を切った。

しばらくして、今度はお兄ちゃんから連絡が入った。
「サークル行かないって、どうして?もしかしたら、俺たちのことが引っかかってるの?もしそうなら、やっぱりみんなに話そうよ。怒られてもいいから、みんなに本当のこと話そう」
お兄ちゃんは少し焦った様子で言った。
「そうじゃないの。学校でね、ラットを飼っていて」
「ラット?ラットってねずみのこと?」
「そう、ねずみ」
大学で解剖用のラットに餌を与える当番があって、サークルの日は、ちょうどその当番に当たっているので、サークルには行けないと由香は笑いながら告げた。
「なんだ、そうだったのか。それなら仕方ないな。じゃ、その代わりに、日曜日、朝からちょっと遠出しようか」
「本当?朝から?朝から会えるんだ?」
由香は、心底喜んだ声で言った。
その声の様子が電話の向こうのお兄ちゃんにも伝わったのか、彼は笑いながら言った。
「おまえ、子供みたいだな。そんなに喜んでもらえたら、俺も嬉しいけど」
そういえばそうだ。今までこんなに嬉しい約束があっただろうか。ただ会えるというだけで、こんなに幸福の絶頂を感じるなんて。
嬉しいとか、悲しいとか、楽しいとか、お兄ちゃんには、そんな今まで持ち合わせたことのない感情をたくさん教えてもらった。
いや、そういう感情はあったのだが、それまではそれを素直に表現することが上手く出来なかった。

日曜になり、待ち合わせの時間に彼はやってきた。
「ね、今日はどこ行くの?」
お兄ちゃんは由香の大好きな街の名前を告げた。
「え!ホント??高校生の頃からよく行ってたの。大好きなところだよ」
「そっか、でも俺はおまえが行きそうな洒落た場所は知らないよ」
「またまた。モテる男は女の子が喜びそうな場所はよくご存じでしょ?」
「あのさ、言っておくけど、俺はそんなにモテないぞ。おまえじゃあるまいし」
「私だってモテませんよ〜」
「もう!減らず口叩かないように、ずっとここにいろ」
そう言ってお兄ちゃんは、由香の頭を腕に抱えて引っ張り、自分の膝に乗せた。
その日から、車に乗った後の由香の指定席はお兄ちゃんの膝の上になった。

お兄ちゃんの膝に頭を乗せ、窓の外を見ると、空と高い建物しか見えず、流れていく車窓はいつも高い位置にあった。
始めはどこを走ってるのか、よく分からなかったけど、馴れてきたら、その高い車窓でだいたいの場所が分かるようにまでなった。
時々、車高の高い車の運転手と目が合って、気まずく下を向いていた。

しかし、上を向いた時見えるお兄ちゃんの笑顔を見るのは由香にとって至福の時間だった。



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| 2017.08.10 Thursday | ニタモノドウシ | comments(6) | - |
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